文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

今こそ読みたい山上たつひこ「光る風」

光る風 第1巻

光る風 第1巻

少し前から話題になっていたらしい表題の作品、Kindle Unlimited 対象になっていたのを見つけ、読んで見ました。なんと言っても「がきデカ」で有名な山上氏ですが、「鬼面帝国」という怪奇ものを読んだ事があり、代表作とは全く異なる作風に驚いた事があります。

その鬼面帝国は1969年の作品、表題の光る風が1970年の作品ですので、元々はこの路線を目指していたのかも知れません。

で、この光る風、考えようによっては鬼面帝国よりも怖いです。鬼面帝国で描かれている怖い世界は恐らくフィクションですが、光る風で描かれているのは過去の事実を踏まえた、当時としては未来への警鐘というべき世界です。

で、その世界が我々の目前に迫っているのです。話題になっているのもそのためです。

やや唐突な終わり方、確かに話をまとめる力量がなかった、という考え方もできるでしょう。が、私は恐らく何らかの理由で継続を諦めなければならなかったのではないかと思います。それだけ、ここに描かれている世界は当時の人々にも単なる風刺には見えなかった、という事では無いでしょうか。

敢えて内容は書かないでおきます。私は運良くKindle Unlimitedで読めましたが、お金を払っても読む価値はあると思います。