文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

名コンビの原点「ジェニイの家」(今週のお題「芸術の秋」)

今週のお題が芸術の秋という事で、ジャック・プレヴェールマルセル・カルネのコンビについて先日書きました。もちろん天井桟敷の人々がこのコンビのプロダクションとして最も有名なわけですが、敢えてあまり知られていない、表題に挙げたこのコンビの第一作(原題は'Jenny')について今日は書きます。

この映画、封切りで公開されたわけではないようで、ウィキペディアにも日本語のページはありません。私はこれを京橋のフィルムセンターで見ました。たまたま空いた時間に見られる映画を探していて、あーあのコンビの第一作かぁ、じゃあ見て見ようか、くらいの気持ちで、あまり期待せずに見ました。

あらすじはこんな感じです。

ロンドンの劇場でリサイタルに出演した若く美しいダニエルは、許嫁の青年との婚約破棄をきっかけに、パリにいる母親の許へ帰る事にした。娘から突然の電報を受けた母のジェニイは、喜びと共に戸惑いを感じた。六年前夫に別れた母は娘を音楽修業に出すために、パトロンの助けを借りて「ジェニイの家」というパリで有名なナイト・クラブを開いていたのだ。

母は娘の為に上品なアパートを借り受けて住まわせたが、娘は次第に母の態度に不審を抱き始めた。或夜こっそりジェニイの家を訪れた娘は、自分の恋が破れた訳を知った。そこで酔った老人にしつこく絡まれている彼女を救った青年は母の愛人リュシアンだった。

お互いにジェニイの事を知らないままに愛し合う仲となった二人はイギリスに移住する約束を交わす。ジェニイはその話を聞いて驚いたが、娘は理由も話してくれない。淋しさに耐えかねてリュシアンの許を訪れたが、彼も冷たかった。

若い二人がパリを離れる日、リュシアンは喧嘩をして頭に重傷を負った。病院へ駆けつけたジェニイは始めて彼の愛人が娘のダニエルである事を知った。娘に知られたくないジェニイは秘かに病院を逃れ、ただ生きるためにのみ、唯一の自分の家、「ジェニイの家」へ帰って行くのだった。

これはあるサイトから引用して、自分なりにまとめたものです。ただ、ラストが私が見たものと少し違うのです。こういう、ラストシーンが複数存在する映画というのはいくつかあるようです。

確かに上記のような終わり方の方がフランス映画っぽいと思います。ただ、私は自分が見たラストシーンに非常に感銘を受けたのです。

第三の男のハッピーエンドはさすがに興ざめですけど、この映画のハッピーエンドは、母親の娘に対する愛情に報いるような、ほのかな希望を感じさせる心暖まるものでした。

この映画、Amazonでも買えるようです。ラストシーンがどうなっているのか、ちょっと興味ありますが、こういう古いモノクロ映画はやはり映画館で見たいものです。

ジェニイの家《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

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