文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

フサ/プラハ1968のための音楽(NHK交響楽団 第1855回定期)

曲順こそ真ん中ですが、この演奏会のメインはやはり、下野さんが何度も演奏しているこの曲だと思います。プラハの春事件を題材とし、地元の吹奏楽団のために最初書かれ、後に指揮者のジョージ・セルのアドバイスで管弦楽版が作られたという経緯のある曲ですが、管弦楽版のアイディアは最初からフサの頭の中にあったのではないかと演奏を聴いて思いました(1曲めのリディツェへの追悼と同じく、この曲も聴くのは始めてでした)。1楽章こそ全合奏になると弦楽器が管楽器に負けてるなあと思う箇所がありましたが、2楽章後半は弦楽器が主体となっており、また4楽章で低弦に現れるメロディのグリッサンドも効果的で意味のあるものでした。打楽器だけの3楽章も上記の弦楽器の旋律との対比でより効果が出ていたのではないでしょうか。

もちろん、この曲を何度も演奏している下野さんだから長所を引き出せたとも言えます。下野さんは今年から広島交響楽団の音楽監督に就任します。これまではドヴォルザークの序曲「フス教徒」などと一緒に演奏してきたこの曲を、今度はペンデレツキ「広島の犠牲者に寄せる哀歌」などと一緒に演奏する事になるのかも知れません。