文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

4月から8シーズン目を迎える「午前十時の映画祭」

先日予約を取ったTOHOシネマズ日本橋で見たのは午前十時の映画祭というやつでした。昔の映画を朝十時から上映するという企画で、まあ東宝系の映画館がやってる名画座みたいなものでしょうか。映画館はグループごとに分けられていて、それぞれ別の作品が上映されます。私がみた浮雲はTOHOシネマズ日本橋が属しているグループBの今シーズン最後の上映作品でした。

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浮雲は1955年のモノクロ映画ですが、映画館の大きなスクリーンで見るとその光と影の世界がより美しさを増すように思います。その時の境遇で表情や声色の変わるゆき子役の高峰秀子、冴えないが何故かそのゆき子を惹きつける富岡役の森雅之、両者の演技が素晴らしいのは勿論ですが、個人的にはゆき子の生い立ちに微妙な陰を落とす伊庭役の山形勲が良い演技をしてるなあという印象を受けました。監督の成瀬巳喜男については、溝口健二が「こいつはホントに男なのか?」と言ったという逸話がありますが(実際はもっと下品な表現だったようです)、この映画の女性の心理描写は、原作者林芙美子、そして脚本の水木洋子の力が大きいように思います。

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