文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

Nocturnes by Kazuo Ishiguro

こういう名前の、英語で小説を書く人がいる事は少し前から知っていたのですけど、ノーベル賞取るほどの人だったんですね。

一番読みやすそう、というか、途中で飽きたら他の本に移って、また戻ってこれそうな(笑)表題の作品から読んでみる事にしました。

音楽にまつわる話ですが、まつわり方?は様々です。

最初の作品"Crooner"では、主人公のストリートミュージシャンが著名ミュージシャンから演奏のお手伝いを依頼されます。奥さんにゴンドラから一緒に演奏する音楽を聞かせる事になる訳ですが、そのココロは・・・

次の作品"Come Rain or Come Shine"は、学生時代の友人夫婦間の諍いに巻き込まれてしまう主人公が意外な行動に出てしまう話。タイトルは曲名です。この曲をよく知っていればもっと楽しめるのかもしれません。

3番目の作品"Malvern Hills"も主人公がギタリストです。もしかしたら氏はギターを嗜むのだろうか、とちょっと興味を持ちました。姉夫婦の営む喫茶店を手伝う主人公とストリートミュージシャン夫婦の交流を描いています。

4番目の作品"Nocturne"はまあ、ミュージシャンが主人公なんですけど、ちょっとあんまり音楽は関係ない作品です。このタイトル、皮肉っぽいですね。

最後の作品"Cellists"は、演奏とは、芸術とは何かを考えさせる作品。個人的には一番興味深く読みました。

いずれも作者の側で明確に答えは提示せず、読み手側に考えさせるスタイル。確かに音楽自体がそういうものかも知れません。主張が弱いという否定的な意見も出そうですが、余韻の残し方が心地良く、多様性が重要な要素になっている昨今では、こういうスタイルが歓迎されるのかも知れません。いずれも映画化したら面白そうです。そういえば、「わたしをはなさないで(Never Let Me Go)」という作品は映画化されてるんですよね。

Nocturnes

Nocturnes

NEVER LET ME GO

NEVER LET ME GO