文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

意外な名演、と言っては失礼なジョナサン・ノット/バンベルク交響楽団のマーラー7番

ジョナサン・ノットというイギリス出身の指揮者がいて、現在東京交響楽団の音楽監督を務めています。彼がドイツのバンベルク交響楽団を指揮してマーラー7番を演奏した録音がspotifyで聴けるので聴いてみました。

マーラーの7番はマーラー交響曲の中では複雑でわかりにくい曲ではないかと思います。しかしこのノットの演奏は要所をうまく整理して聴かせており、成功している演奏だと思われます。以下に2つほどポイントを挙げます。

1楽章コーダ(二分の三拍子)に入ってからの聴かせ方

これまでにでてきた様々な要素が交錯して響くため、どのように整理して聴かせるか、指揮者としては腕の見せ所ではないかと思います。特に501小節のホルンとチェロから、502小節のトロンボーンにつながるメロディはここにしか出て来ないのですが、ノットはしっかり聴かせています。

主旋律より大きく聞こえる伴奏音形

この曲の「夜の歌」の由来として、2楽章と4楽章にそう書かれているという事がまず挙げられますが、「本来聞こえるべき音が聞こえない(聞こえにくい)」という事もあるのではないかと私は考えています。4楽章の練習番号197番以降や、5楽章の284番の2小節前以降はメロディよりも伴奏のほうを大きく演奏するよう指定されている箇所があり、ノットはその伴奏を効果的に聞かせています。

ノットはまだ東京交響楽団とはこの曲を演奏していないようです。音楽監督就任のきっかけになったのは、ラヴェル「ダフニスとクロエ」の演奏だそうですから、レパートリーの広い指揮者のようです。今後の活躍が楽しみです。

東京交響楽団さんの音楽監督紹介ページ ジョナサン・ノット | 東京交響楽団 TOKYO SYMPHONY ORCHESTRA