文系フリーランスまたは休日低音大堤琴奏者の戯言

翻訳を生業とする文系フリーランスです。日々思い付く事を書いてます。

江戸川乱歩の原作より面白い増村保造の盲獣

江戸川乱歩に盲獣と言う作品があります。盲人の触覚に対する執着を触覚の芸術と称して描いた作品ですが、はっきり言ってあまり芸術的ではありません。大衆雑誌に連載されたもののようで、どちらかと言うとグロの要素が大きい作品です。

盲獣 (創元推理文庫)

盲獣 (創元推理文庫)

なぜこんなものを読んだのかと言うと、これを元にした映画があるのです。倒産した大映の末期の作品で、ほぼワンセット、主要当時人物2人と全くお金がかかっていない作品なのですが、セットの怪しい造形、緑眞子と船越栄二の迫真の演技で非常に見ごたえがあります。特に自分を誘拐してきた盲人に魅せられて行く女を演じる緑眞子の演技は素晴らしいです。映画化されているのは最初のわずかな部分なのですが、その後の部分が無駄に思えてしまいます。監督は大映を倒産まで支えた増村保造。イタリアに留学した監督さんです。豪華なセットで有名なヴィスコンティ監督の作品などとは対照的ですが、特にラストシーンの描写などはイタリア映画の影響が大きいのではないかと思われます。

本の挿絵はかなり古いスタイルの絵だと思いますが、映画はセットがシンプルなせいか古さを感じません。機会があったら見て見て下さい。

盲獣 [DVD]

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